「2020年度の保育業界の動向と経営戦略」

2020年1月21日配信

テーマ:
時流・業界動向

「2020年度の保育業界の動向と経営戦略」とは?

みなさま、こんにちは。船井総研の大嶽です。
当メルマガをお読みいただきまして、誠にありがとうございます。
今回のテーマは「2020年度の保育業界の動向と経営戦略」ということでお届けしたいと思います。

まず、昨年を振り返ると、保育業界は事故や事件が例年にも増して多かったように思います。
痛ましい交通事故、保育士の一斉退職、助成金の不正受給、急な閉園など、枚挙にいとまがありません。

これは経営のセオリーですが、数や量が増えれば増えるほど効率性は上がるのですが、それと品質向上は必ずしも一致しないことがあります。特に保育や介護などの労働集約型産業はその傾向が強いと言われています。

つまり、保育園が増えれば増えるほど、人材が増えれば増えるほど、マネジメントが難しくなり、相対的には質が低下します。

さらに保育市場の成長により、様々なプレイヤーが参入してくるので、益々質のばらつきが顕著になります。
その傾向が例年よりも顕著に影響した1年だったと言えるでしょう。

これらも踏まえ、来年の経営のポイントを簡単にお伝えしておきます。
まず、ざっと2020年の経済動向や景気動向を見てみましょう。
毎年様々なエコノミストやシンクタンク、企業経営者の景気予測の書籍やコラムをチェックしてますが、今年の国内については概ね、

・成長率は明らかに鈍化して、0.5〜0.8%程度
・年の後半はさらに成長率が下がる可能性が高い
・日経平均株価は現状維持で21000〜23000円

と予想しているようです。
ちなみに、経済予測を的中させ続けているニトリの似鳥会長は、

・世界の経済成長率は3%程度(リーマンショック直後に次いで低い)
・日経平均株価は21,000円~23,000円(現状維持)
・8月以降日本経済は減速。株価は高止まりの可能性はあるがそれは見せかけ。
・景気指標である住宅着工件数はさらに減少

ということで、他の有識者の見解とさほど変わらないようです。
要するに、2020年を端的に言えば、「オリンピックに向けて国内消費は盛り上がりますが、増税後の消費減も含めて、景気低迷の波は収まらず、非常に厳しい経済環境になる」ということです。

保育業界でも景気動向に伴う業界変化や先行き不安の話が少しずつ増えてきました。

それを考えるうえで、まずは2008年以降のリーマンショック後を思い出してみてください。
リーマンショック後は、製造業をはじめ、外食産業などの他のサービス業と比べても、保育も教育もさほど影響を受けませんでした。
改めて保育業界は、不景気に強いのが特徴です。

最後まで消費者(保護者)が手をつけない、むしろ、教育費を守るために、他を削るというほどに、景気に強い業界だと客観的に思います。
事実、リーマンショック後は数字を見ても保育市場は成長曲線を描きました。

しかし、それでも当時は雇用が厳しかったので、働きたくても働けない人が多く、その数
字には乗ってこない潜在ニーズも多かったわけです。

今回は少し様子が変わると見てます。
今後の景気低迷については、さらに幼児教育、高等教育の無償化もあり、楽観的に捉えると、影響はさほどないと思います。

そもそも今年から始まるであろう、経済成長の低迷はリーマン級のショックではないこと、企業の業績が低迷しても、人余りになることは考え難く、雇用は確実に増えるため、特に子どもが小さいうちから保育園に預けるニーズは増えるはずです。

しかし、そうは言うものの、楽観視して良いのでしょうか?
私はそうは思いません。
子育て安心プランをベースに、新園は2020年度もかなり増えることが予想されます。
それによって、さらに保育士不足に拍車がかかり、離職も増え、人件費やHRコストが増え、利益率を圧迫します。

特に固定比率が高い法人、企業においては、園児の受け入れが出来ないことによる利益率の圧迫は避けられません。
長期的に見ると、収支差額や利益が残せずに、次の投資に回せず、人的投資も出来ずに苦しい経営を強いられるリスクもあります。

では2020年以降の経営のポイントはどんな点になるのでしょうか?

改めて私が提唱する以下の経営テーマに関して、是非ご自身の経営と照らし合わせて検討みてみましょう。

1. 全体戦略

ビジョン、ミッションの再統一、ガバナンス強化、力相応のM&A検討

2. マーケティング戦略

0‐12歳事業多角化、都市部進出(地方中小都市)、開設立地の精査、脱・飛び地化による管理コスト軽減、キャリアパス環境づくり、ダウンサイジング(大規模幼稚園)、個別最適化の検討、STEAM教育の導入

3. 人事戦略

採用・育成への投資分配強化、リクルートエクスペリエンス(RX)の見直し、力相応のエリアで長期かつ深く関わる力強い採用、エンゲージメント組織化、働き方改革の地域一番化、分業化の推進

4. 財務戦略

中長期の市場縮小に向けたキャッシュフローの改善、流動比率100%以上・ROA(当期純利益/総資産×100)5%以上の実現、充実計画による再投資(社会福祉法人)

5. デジタル戦略

業務効率を目的としたICT化・デジタイゼーションから、品質向上・価値向上を目的としたDX(デジタルトランスフォーメーション)へ、リクルーティング、コミュニケーション、管理の3つの人事領域におけるHRtecの最適活用、教育の個別最適化のためのEdtecの検討いかがでしょうか?
このテーマが自社では優先順位が高い、必要性が高いという整理が出来ましたでしょうか?
今年も当社の経営研究会やコンサルティングの中でこれらのテーマに応じたより具体的な経営ノウハウ、事例を必要に応じてご提供、発信させていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

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