「これまでの延長」ではない事業戦略の考え方
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いつもお読みいただきありがとうございます。
株式会社船井総合研究所の永田屋でございます。
まもなく新年度を迎える時期ですが、次年度以降の事業展開について、皆様どのように計画を練られているでしょうか。少子化が加速する現代において、保育事業は従来の延長線上では厳しくなる可能性が高まっています。一方ぼんやりとした危機感は持っているが、何から手を付けて良いかわからないという方も多いかと存じます。
昨年、国は「こども大綱」および「こども未来戦略」を打ち出し、こども・子育て関連事業の未来図を示しました。そこには、これまでの保育サービスにとどまらない、幅広い事業展開の可能性が示唆されています。
本メルマガは、保育事業者の皆様が、今後の厳しい時代を生き抜くために、どのような視点で事業戦略を考え、具体的にどう展開していくべきか、考えるヒントをご提示できればと思います。
こども未来戦略を踏まえた国の方針の変化
国は、止まらない少子化に対処していくため、昨年度「こども未来戦略」を策定しました。この戦略は、従来の保育サービスを中心とした施策から、より包括的かつ多角的なこども・子育て支援へと大きく舵を切る内容となっています。
具体的には、支援の「時間軸」と「対象」が大きく広がりました。妊娠期から乳幼児期だけでなく、学童期、さらには思春期や若者まで、切れ目のない支援を提供することが目指されています。また、障がいのある子どもとその家族、経済的に困難な状況にある家庭など、これまで十分な支援が行き届いていなかった層へのサポートも強化されます。
このような国の大きな方針転換は、保育事業者に対し、事業の根本的な見直しを迫るものとも言えます。もはや「保育所を運営する」という従来の枠組みだけにとらわれていては、時代の変化に対応できなくなってきています。
これからの保育事業者には、地域における子育て支援を総合的に担う存在として、自らの役割を再定義する必要があります。多様なニーズに柔軟に対応できる事業展開、行政、医療、福祉など他機関との緊密な連携が、これまで以上に重要となるでしょう。
事業展開の選択肢と具体例
こうした時代背景を踏まえ、保育事業者が今後取り得る事業展開の選択肢は、主に3つ考えられます。
1. 保育事業の深耕
一つ目は、本業である保育事業をさらに深掘りし、量的・質的に拡大していく道です。具体的には、公募への積極的な参加や、M&Aによる事業承継を通じて、保育所の運営数を増やしていくことが考えられます。
この選択肢のメリットは、既存のノウハウやリソースを最大限に活用できる点にあります。しかし、近年、新規の保育所開設は減少傾向にあり、競争が激化していることも事実です。単に数を増やすだけでなく、既存の保育の質を高め、他園との差別化を図る戦略も同時に求められます。
2. 新たな事業の柱の構築
二つ目は、保育事業に次ぐ、あるいは並び立つ新たな事業の柱を育てるという選択肢です。これにより、事業リスクの分散を図り、新たな収益源を確保することができます。
例えば、待機児童の多い地域では学童保育事業を強化する法人が増えています。また、保育士不足が深刻化する中で、保育士・幼稚園教諭の人材紹介・派遣事業は、社会貢献と収益性を両立できる可能性があります。その他、子育て支援に関するコンサルティング事業や、企業主導型保育事業の受託、保育士や保護者向けの研修事業なども考えられます。
この選択肢には、新規事業に関するノウハウやリソースの確保が必要となりますが、中長期的な視点で見れば、法人の安定的な成長に大きく貢献する可能性があります。
3. 関連事業による相乗効果
三つ目は、既存の保育事業を主軸としつつ、関連事業を付加することで、事業全体の相乗効果を高める戦略です。
具体的には、一時預かり事業、病児保育事業、地域子育て支援拠点事業、子育て相談事業などが挙げられます。また、親子向けのイベント開催や、給食サービスの外部提供、保育用品・教材の販売なども考えられます。
これらの事業は、単独では大きな収益を生み出しにくいかもしれませんが、既存の保育事業との連携を強化することで、地域からの信頼を高め、利用者満足度を向上させる効果が期待できます。
3つほど選択肢をお示しいたしましたが、どれか一つが正解ということはありません。自法人の強み・弱み、経営資源、そして何よりも地域のニーズを徹底的に分析し、最適な戦略を選んでいくことが重要です。
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