いつもお読みいただきありがとうございます。
株式会社船井総合研究所フィナンシャルアドバイザリー支援部の中野です。
本日は保育業界における事業承継がなぜ解決されないのかについて触れていきたいと思います。国内の中小企業経営者の世代交代が必要であることは10年以上前から言われてきたことですが、帝国データバンク「全国「後継者不在率」動向調査(2023年)」によると2023年の抽象企業のおける後継者不在率は例年よりも改善傾向にあるものの53.9%と依然高い割合であり、かつ経営者平均年齢が60.8歳(推定)と過去最高値となっています。
保育・教育業界においても例外ではなく、むしろ高齢でも業務管理自体は可能なことから平均年齢も高く、事業承継についての検討も後手に回っているように思います。
このような状態の中でなぜ事業承継が進まないのか、私も数多くの経営者様に接してきた中で、いくつか心理的なパターンがあることに気づきました。
【①そもそも事業承継について考えたくない】
このケースが一番多いと思います。事業承継というのは代表の座を後継者に譲ることです。ライフワークとして長年やってきた経営の第一線から自分が離れることには想像を絶するもの寂しさがあると多くの経営者から伺います。さらに言うと生涯現役で事業承継はその後にやってくれという経営者が一定数いらっしゃいます。お気持ちはとてもわかります。
【②事業承継は何から準備していけばいいかわからない】
次に多いのはこのケースです。後継者はどういう基準で選ぶのか、具体的に何から手を付ければいいのか、自身の相続財産もあるから対策しないといけないとか、様々考える必要があります。考えているうちに、重要度が高いが優先度がどうしても低いことから他の仕事を優先し、事業承継は頭の片隅にそっと閉まってしまい、いよいよとなるまで課題が眠ることとなります。
【③事業承継の対策はできたと思い込んでいる】
もちろん事業承継の準備をしっかりなされて、既に対策を講じている経営者様も多くいらっしゃいますが、ご自身で準備ができていると思っていても、意外にできていないことも多くあります。次のような項目についてチェックしてみましょう。
□後継者の有無、経営者としての教育(社内の場合、承継前3年・承継後2年)
□後継者の選定(親族内、経営幹部、第三者(M&A))
□後継者に並ぶ組織図(後継者と同年代の経営幹部の設計)
□後継者から経営者になるための成功体験(一つの業務を成し遂げる経験)
□オフバランス(貸借対照表の整理)
□将来的な株主構成にするための自社株評価と株式の譲渡・贈与手続き
□事業承継税制の活用(特例承継計画の提出)
□会計システムのクラウド化および予実管理の徹底
□承継の時期と社長引退後のポジション設定
いかがでしょうか、私がお会いした経営者様より伺うこととしては、後継者が既にいるから大丈夫と仰っておられ、上記の一番上しか対策していないケースが多くあります。しかしながら、成長を続けてきた会社であればあるほど、承継の難易度は高く、後継者が運営していくには多大な苦労をすることがあります。
【④株式会社と違い、社会福祉法人、学校法人で運営していることから第三者に具体的にどのようなスキームで承継するべきかがわかりにくい】
今やM&Aについてネットで検索したりYoutubeにも様々な解説動画がありますが、実のところ社会福祉法人や学校法人という法人格の承継方法というのはあまり明確に書かれているものは非常に少ないと思います。このような実態があることから、株式会社とは別の法人格で運営していて、悩んでおられる企業様も多くいらっしゃいます。
①~④のケースが国内の中小企業で事業承継が進まない理由の大部分となりますが、実際に事業承継をしないとどうなるのか。企業によっては急な代表者の引退が発生したことにより、せっかく築き上げてきたブランドや企業文化が大きく変わってしまったり、後継者が多大なる苦労をすることがございます。事業承継の準備の方法や承継のスキームについてしっかりとした手順があります。経営者様ご自身の引退時に不十分な事業承継にならないためにも経営者様にご理解いただきたい必須項目となります。
[出典] 帝国データバンク「全国「後継者不在率」動向調査(2023年)」
今から考える「園」の引継ぎ 保育事業者向け事業承継セミナー