「保育士の即戦力化」に必要なのは技術よりも想い

2024年6月25日配信

テーマ:
採用・育成

皆様
いつも保育園経営.com のコラムをご愛読いただきましてありがとうございます。
船井総合研究所 子育て支援部の菅野 瑛大(かんの あきひろ)です。

年度開始3か月、見直しはできていますか?

2024年度がはじまり、早くも第一四半期が過ぎようとしています。
新入職員のメンバーも現場に慣れてきて、園児数が増加する後半戦に向けて、ここからは力を発揮するための準備に入る第二四半期になるかと思います。
ここでいう新入職員は「新卒」だけではなく「中途」メンバーも当てはまります。
まずは、新たな戦力はしっかり定着していますでしょうか?
先輩職員となるメンバーは同じ方向に向かって、新入職員をリードできていますか?
新入職員には、法人の方針や園の仕事・保育へのアプローチがきちんと伝わっていますか?

想いの共有には「言語化」が重要

この時期から新メンバーから出始める声が、「A先生とB先生から言われるものが違う…」であったり、「普通は/私の働いていた園ではこうでしたが…」といったりしたものです。
様々な見直しが必要であろうかと思いますが、まず、こうした声が聞こえてきていたら要注意です。
なぜなら、あり方や、やり方が正しく伝わっていないからです。
【法人理念・教育保育理念→目標・方針→各種計画→左記を達成するための細かいやり方】
といった考え方とその実現方法を、
【経営者・経営陣→幹部職員→中堅職員→先輩職員→新入職員】
の伝達経路で落とし込みをしていく形が一般的です。
実際に皆様もこのような取り組みをしているはずだし、伝達経路で言えば、経営者層の皆様から全職員に対して直接行っている場合も多いと思います。

ところが伝わっていない。どこでエラーが起こっているかというと【法人理念・教育保育理念】を伝えるスタート時点で、すでに理解に至っていないケースが非常に多いです。
その理由は、「理念」といったものは抽象度が非常に高いため、伝わる、すなわち「理解」に至るには時間を要したり、変換できる能力が受け手に必要になったりします。

こうした課題を解決する方法は、

抽象的なものを伝えるためには、具体化させてイメージができるようにすることです。
つまり経営者である皆様、法人として紡いできた想いや考えを「言語化」することがポイントです。
よく、こういったものの対策には「新たに××をしましょう」というアドバイスがあるかもしれません。
しかし、それは大きな間違いで、伝えているけど伝わって、理解してもらえていないものへは、課題をとらえて、そこを調整するだけでよいのです。
つまり今あるもの(理念や考え方、やり方など)を再説明すればよいのです。
この時に意識する点は「時流に合わせた」言葉や考え方を基に、「日々の仕事に落とし込んで」説明することです。

「私たちの保育・教育」を説明できますか?

これまで様々な法人・園様にお伺いする中で「他社のとの差別化」について聞くと、「特にないのですが……」というキーワードから始まるケースが多くありました。
ところが、そのあとお話を続けていただくと、非常に差別化できる内容=商品・サービスや人財力が多くあったり、独自のブランド力があったりといったことが聞くことができるのです。

これが何を意味するか。質問している相手は経営層の皆様です。
このコラムを読んでいる皆様も、上記の質問をされて、すぐに明確な回答ができますか?
実は、経営層自身も自分たちが提供しているサービスに対して、自信を持って簡潔に説明することができないケースが少なくないのです。
現場で働いていれば、園を利用していれば「感じられるから、良さがわかるだろう」というのは、ブランドコミュニケーションの放棄に近しい行為です。

その結果として、職員が思ったように成長/仕事をしてくれない、定着が安定しない、自由な使い方をする保護者が増えてきた、といった問題につながっている可能性が高いのです。

行動の前に認知と理解

「私のやりかたでは」「私が前にいた園では」「〇〇先生に言われたのは」こんな理由を並べられて、マネジメントエラーが起こっていく、ということはないでしょうか?
「うちのやり方、考え方でやってくれ」と思っていても、そもそも「うちのやり方」を簡潔に、一貫性をもって説明できますか?
これができないと、職員からは理屈で「では、どうやってやるか決めてください/明確にやり方を教えてください」といった正論を用いて返されます。
こうならないための施策は何か。

何かに取り組んでほしい、行動に移してもらうためには、何をするかを認知し、それに対しての理解がなければ、スタートラインに立てないケースが多いです。
なぜならそれにより失敗があった場合に、発生するリスクが大きいと感じられるからです。
だからこそ「やって」の前に「どういうものかを知り」、「具体的にどうするかを理解」させる、つまり、言語によって説明し、場合によってはケーススタディを交えて実行する本人がイメージをできるようにしてあげる必要があります。

日々の取り組みから【伝える×理解する】の仕組みをつくる

伝える機会と理解する機会は、日々の仕事の中でありますが、この使い方が重要です。
働くうえでの学びの機会は大きくOff-JTとOJTの二つに分かれます。
これをどのように設計するかが重要です。

上述してきた課題解決に向けた、仕事上の学びの機会の使い分けを、
✓OJT①:日々の仕事や業務を通してどういった仕事があるか認知する機会
✓Off-JT:その仕事がどういうものか、どうしてほしいかを説明を受け頭で理解する機会
✓OJT②:具体的にどのように対応するかを身体で理解する機会
✓OJT③:理解した仕事や業務を実行する機会
の【認知→あり方の理解→やり方の理解→行動】といったステップに分けられます。

OJTやOff-JTは習慣的に行っているため、マンネリ化している可能性があります。
OJTでは「とにかく注意してみて、真似て」といったものに、Off-JTにおいて外部研修は「キャリアアップ研修」に、内部研修は「マニュアルの読み合わせ」の時間になっていませんか?
この時間の使い方を変えるだけで、仕事時間を増やすことなく、取り組んでほしい仕事に対して、方向性をただしたうえで推進力をつけることができます。
【あり方×やり方】を組み合わせることで、何をどういう理由でどのようなアプローチで対応してほしいかを共有して、それを実行してもらえることが、新入職員の下限品質が高まり、既存職員はその習熟度が増します。
もちろん全ての仕事・業務に対してまとめてアプローチできるものではありませんが、今、気になっているもの1つでもよいので、一点突破して即戦力化された領域を創る成功体験を築いてください。

仕組みができれば回転を上げていけばよいですが、次の課題として「何をどう伝えるか」といったものが表出化してきます。
次回コラムでは、経営者/経営陣や園の想いの「言語化の手法」について解説いたします。

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