今回は令和5年度の国家公務員の給与改定に紐づく人件費改定状況部分(以下、人事院勧告分)について解説いたします。
令和5年度は従来の取り扱いと異なるため注意が必要です。
令和5年度は5.2%分支給しなくてもいい!?
3月8日付で公定価格のFAQが更新されました。
更新内容の一部を紹介します。
《質問》
処遇改善等加算の起点賃金水準に含まれる「基準翌年度から加算当年度までの公定価格における人件費の改定分(以下、「人件費の改定分」という。)」の算式で算定した金額と「令和5年度当初予算の公定価格に基づいて計算した金額と令和5年度補正を反映した公定価格に基づいて計算した金額との差額(以下、「改定による影響額」という。)」を比較した場合、「人件費の改定分」の金額の方が大きいが、どのように対応すれば良いか
《回答》
令和5年度補正予算による公定価格の増額分は令和5年人事院勧告に伴う人件費の増額であるため、基準年度が4年度である場合、改定による影響額を人件費の改定分として取り扱って差し支えありません。なお、基準年度が令和3年度の場合は、令和5年度の当該差額に、「6.4%(基準年度が令和3年度の場合の人件費改定分に係る改定率)/5.2%(基準年度が令和4年度場合の人件費改定分に係る改定率」の割合を乗じて算出した額を使用しても差し支えありません。また、基準年度が令和2年度以前の場合も、この考え方に準じて算定していただくことは差支えありません。この金額から法定福利費等の事業主負担分の増加分を除いたものを人件費の改定分としてください。また、上記の方法によるほか、事務負担が大きい場合には、人件費の改定分の<算式1>に0.9の調整率を乗じて算定して差支えありません。具体的には、以下の計算式となります。この金額から法定福利費等の事業主負担分<算式2>を除いたものを人件費の改定分としてください。
<算式>「加算当年度の加算Ⅰの加算額総額(増額改定を反映させた額)」×{「増額改定に係る改定率」÷「加算当年度に適用を受けた基礎分及び賃金改善要件分に係る加算率」}×0.9(調整率)
参考:こども家庭庁 公定価格に関するFAQ(よくある質問)(Ver.24)
従来とどこが違うのか以下で解説します。
人事院勧告分は5.2%といわれているが、実際はそんなに増えていない…!?
FAQの質問には、
・人事院勧告分は5.2%上がっているとあるが、実際に計算すると5.2%も増えていないがどうすればいいか?
という趣旨の文言があります。
そのため国として調べた結果、
・実際にそんなに増えていなかったため、5年度については従来の計算結果×90%で計算したものを支給する運びとします
という回答結果となりました。
《従来の計算方法》
「加算当年度の加算Ⅰの加算額総額(増額改定を反映させた額)」×{「増額改定に係る改定率」÷「加算当年度に適用を受けた基礎分及び賃金改善要件分に係る加算率」}
《令和5年度のみ適応の計算方法》
「加算当年度の加算Ⅰの加算額総額(増額改定を反映させた額)」×{「増額改定に係る改定率」÷「加算当年度に適用を受けた基礎分及び賃金改善要件分に係る加算率」}×0.9(調整率)
そのため、早々に準備をして従来の方法で計算し、支給された方は一部支給し過ぎていることになります。
ただ、支給し過ぎた金額を以下のように取り扱うことで、一部回避する方法がございます。
支給し過ぎた金額をⅠ、Ⅱ、Ⅲの残額分として取り扱う
年度末又は年度始めのタイミングで
・処遇改善等加算Ⅰ,Ⅱ,Ⅲの残額を調整して支給する
という作業をすることが多くあります。
そこで、その残額分の支給額として、今回支給し過ぎた人事院勧告分を充てることで園全体でみると支給し過ぎている状況を回避することが出来る可能性がございます。
そのためには
① 令和5年度において本当に支給しないといけない人事院勧告分はいくらか?
「加算当年度の加算Ⅰの加算額総額(増額改定を反映させた額)」×{「増額改定に係る改定率」÷「加算当年度に適用を受けた基礎分及び賃金改善要件分に係る加算率」}×0.9(調整率)
② 実際に人事院勧告分で支給した金額-①で支給し過ぎている金額を計算する
③ 処遇改善等加算Ⅰ,Ⅱ,Ⅲにおいて余っている残額を計算
④ ②、③での金額を比較し②>③の場合は一部園の手出しが発生しており、②<③の場合は園の手出しが発生していないということになる
といった手順で計算する必要がございます。
処遇改善等加算Ⅰ,Ⅲについては支給済みの園も多くあるかと思われますが、Ⅱについてはおおよそ園負担の法定福利費分が残額として残っているケースが多いです。
そのため、人事院勧告分で支給し過ぎた金額を処遇改善Ⅱの残額支給分とすることで支給し過ぎた金額を園全体で調整することが出来ます。
一方で、自治体によっては令和5年度の取り扱いによる計算ではなく
単価改定後公定価格による年間運営費補助金―単価改定前公定価格による年間運営費補助金
を人事院勧告分として取り扱っている自治体もございます。
この辺りは自治体によって対応が異なりますので、ご注意ください。